人が成長して成熟すると、自分の両親や自分が生まれ育った環境から離れて行き、自分の両親とは異なる、自分の人生の方向性と人生の目標を追究するようになります。この時期、人はもはや両親を必要としませんが、一緒に生活できる相手、すなわち、自分の運命と密接な関連性を持つ、配偶者を必要とします。このように、人が独立してから最初に遭遇する主要な出来事は結婚であり、それが、人間が経験すべき第四の節目です。
誰にとっても結婚は人生における重要な出来事であり、人が様々な務めを本当の意味で担い始める時であるとともに、次第に様々な使命を遂行し始める時です。人々は、自分が自ら結婚を経験するまで、結婚に関して様々な幻想を抱いており、それらの幻想はすべて実に美しいものです。女性は、白雪姫に登場する王子のような自分の夫を想像し、男性は自分が白雪姫のような人と結婚することを想像します。こうした空想は、あらゆる人が、それぞれ結婚に対して一定の条件、要望と基準の諸条件を持っていることをまさに証明しています。この邪悪な時世において、人々は結婚に関して歪んだ情報に常にさらされ、それにより必要条件がさらに増加し、人々にあらゆる種類の負担が課せられ、結婚に対する人々の姿勢は奇妙なものになっています。しかし、結婚を経験した人は、人が結婚をどう理解しているか、結婚に対してどのような姿勢であるかを問わず、結婚とは個人的選択の問題ではないことを知っています。
人間は、人生において多数の人々に出会いますが、誰が結婚相手となるかを知る人はいません。誰もが結婚という問題に対して個人的な概念や心構えを持っているものの、最終的に誰が真の相手となるかを予測できる人はおらず、また、この問題に対する自分自身の概念はほとんど意味をなしません。自分が好きな人物と出会い、その後、その人物を追いかけることはできても、その人物が自分に関心を持っているか、自分の配偶者となり得るかは、自分自身で決められることではありません。自分が慕う人物は必ずしも自分が人生を共にする相手であるとは限りません。その一方で、全く意外な人物が自分の人生に静かに登場し、自分の運命において最も重要な要素であり、自分の運命が切り離せないほどに結びついている人物、すなわち配偶者となります。そのようなわけで、世界には数百万の結婚がありますが、ありとあらゆる結婚はそれぞれに異なります。不満な結婚、円満な結婚、東西にまたがる結婚、南北にまたがる結婚、完璧な相性の結婚、同じ階級同士の結婚、幸福で調和した結婚、辛く悲しい結婚、羨望される結婚、誤解され、疑問視される結婚、幸福に満ちた結婚、涙に溢れた絶望的な結婚、こうした結婚がそれぞれ非常にたくさんあります。そのように無数の類の結婚がある中で、人間は結婚生活への忠誠と一生の約束を示します。愛情、慕情、分かちがたい結びつき、あるいは断念、無理解、裏切り、さらには憎悪を示す人々もいます。結婚そのものがもたらすのが幸福であるか苦悶であるかを問わず、結婚における各人の使命は創造主により予め定められ、変わることがありません。この使命はあらゆる人が全うしなければならないことなのです。それぞれの結婚の背景にある各人の運命は変わりません。なぜなら、それは創造主により遥か昔に定められているからです。
結婚は人の人生における重要な節目です。結婚は人間の運命の産物であり、人の運命における極めて重要な接点です。結婚は人の個人的な意志や嗜好に基づくものでもなければ、何らかの外的要因に影響されるものでもなく、その一切は、当事者双方の運命、双方の運命への創造主による采配と定めにより決定されます。表面的には、結婚の目的は人類の存続ですが、実際は、結婚は人が使命を全うする過程で経験する儀式に他なりません。結婚において人々が果たす役割は、単に次の世代を養育するにとどまりません。人々には、結婚を継続する過程においてありとあらゆる役割と、その役割を完遂する使命があります。人の出生は、人々、出来事、その周囲の物事のうちに起こる変化に影響を与えるので、人の結婚もやはり、必然的にそうした人々、出来事、物事に影響を与え、さらには、それら一切を色々な方法で変化させるのです。
人が独立する時、人は自分自身の人生の旅路につき、自分の結婚に関連する人々、出来事、物事へと、一歩一歩導かれていきます。それと同時に、その人と結婚する配偶者もまた、同じ人々、出来事、物事へと、一歩一歩近付いていきます。創造主の統治下において、繋がりのない二人の人間が繋がりのある運命を共有し、次第に結婚する方向へ進み、奇跡的に家族、すなわち「一本の縄に張り付く二匹のいなご」となります。したがって、人が結婚すると、その人の人生の旅路は配偶者に関与して影響を与え、同様に配偶者の人生の旅路はその人の人生の運命に関与して影響を与えます。言い換えれば、人間の運命は相互に関連しており、他人に全く依存せずに自分の人生における使命を全うし、役割を果たすことができる人はいないということです。人間の出生は、極めて幅広い一連の結びつきと関係があります。成育もやはり一連の複雑な結びつきに関係しています。同様に、結婚は必然的に極めて幅広く複雑な網の目のような人間関係の中に存在し、その範囲内に維持されて、その結びつきの中にいるあらゆる人の運命に影響します。結婚は、当事者双方の家族や、成育環境、容姿、年齢、資質、才能、その他あらゆる要素の産物ではなく、むしろ共通の使命と、繋がりのある運命から生じます。これが、創造主により指揮され、用意された、人間の運命の産物である結婚の起源です。
『神を知ることについて』「唯一無二の神自身 III.」(『言葉』第2巻)