寄稿家:チンシン(マレーシア)
チンシンは貧しい家庭に生まれました。彼女は「知識は人の運命を変える」や「人の宿命はその人次第である」といったことを先生たちから教え込まれていました。これ故に、彼女はこっそりと自分自身にこう誓いました:「私はサラリーマンになってレベルの高い生活を送れるよう一生懸命に勉強して4年制大学に入る必要があるわ。」しかし、事は彼女の期待とは逆の方向に進みました。チンシンは4年制大学には入れず、事務員としての生活を始めることになりました。
彼女の息子が生まれた後、チンシンは自分の夢を息子に託し、息子が人々の間で注目を浴びて家名に名誉をもたらしてくれることを期待しました。彼女は内に秘めた夢を実現させようと、息子が喋ることを学んでいた頃、家の壁にリーディングカードを沢山貼り付けて読むことを学ばせようとました。これに加え、彼女は息子の思考能力と脳の発達を刺激しようと息子に教育に関するCDを沢山購入しました。彼女は毎週末に家事をしながら息子を教育しました。
チンシンは息子が2歳半だった時に彼を保育所に送りました。ある日の夜中、彼女の息子は泣きながら突然起き上がりました、「ママ―、僕、学校には行かない。おもちゃで遊ぶ時間が無いから。」これを聞いたチンシンは心が痛みました。しかし、彼女は、「社会における競争はとても激しいし、一生懸命に勉強しなかったら将来息子は社会的地位を手にすることができないわ」と考えました。彼女はこう言って息子を慰めざるをえませんでした、「ママはあなたが一生懸命に勉強してることは分かってるわよ。でも将来良い生活をしたかったら頑張るしかないの。」彼女の息子は半分分かったように頷いて、ボーっとした感じで横になって、また眠りにつきました。チンシンは自分の幼い息子を見て涙をこぼしました。彼女はこう考えました:「ママがやっていることは全てあなたが将来の保証を手にするためなのよ。他には選択肢がないのよ。」
瞬く間に、彼女の息子は小学校に入学しました。息子にもっと学習させようとしたチンシンはかなり忙しくしていました:毎日、息子が学校から帰ると、彼女は先ず彼を塾に連れていき、そこではベテランの教師が子供たちの宿題を手伝い、絵の描き方を教え、インターネットに関する教育も行われていました。夕方になると、チンシンは息子を急いで家に連れて帰りました。息子が素早くシャワーを浴びて夕食を済ませると、彼女は彼を他の塾に連れていきました。息子が帰宅した時は既に夜の10時半になっていました。チンシンは毎日自分を引きずるようにして帰宅する息子を見ていると、言葉では表現できないような無力感に駆られました。
幸い、彼女の息子は成長する強い願望があり、彼の成績は常に最高レベルでした。彼女の友人と親戚たちは誰もが彼女の息子を高く評価し、彼は賢くて、将来間違いなく立派になって家名に名誉をもたらすだろうと口を揃えて言いました。これを聞いたチンシンはとても喜び、息子の良い成績が彼女にとって何よりのご褒美であると思いました。
息子が誤って不良と関わるのを避けるため、チンシンは息子が中等学校に入ると彼の外出に制限をかけるようになり、息子が運動場にバスケットをしに行っても、目の届かない所に行くことは許しませんでした。彼女の息子はこの要求に対して決して反抗しませんでした。彼が同級生の誕生日パーティに行きたいことがあっても、彼女は、「外に遊びに行くより、家で勉強していた方がいいわ。将来、名を上げたら何でも好きなことしていいんだから。」彼女に数回却下されて以降、息子はもうこのようなことは口にしなくなりました。
2018年1月、彼女の息子は大学入試を受ける段階に差しかかり、彼は専攻科目を決定する必要がありました。チンシンは科学は将来性があって、息子が将来的に良い仕事を選ぶ選択肢が沢山あると思ったので彼に科学を選択するよう言いましたが、彼女の息子は違う考えを見せました。チンシンは理由を説明しました、「競争の激しい実社会ではプロの知識がないと自分の地位は確立できないの。そうじゃないと生き残れないのよ。」意外にも、彼女の息子はこう言いました、「科学には興味ないんだ。僕は一般教養科目を選択するよ。」自分の息子の考えを変えようと、チンシンは、「興味は変わるものよ」、と言ってこれを全く受け入れませんでした。しかし、彼女の息子はそれでも、「興味は絶対に変わらないよ。好きでもないことを一生するのは嫌だからね」、と言って自分の決断に固執しました。それ以降、二人は頻繁に顔を真っ赤にしながらこれについて口論して、お互いに譲歩しませんでした。
ある日、チンシンは又しても科学の有利な点を実体験と照らし合わせながら息子のために分析しようとしました。彼女は熱心に優しい口調でアドバイスしました、「お母さんは科学の勉強が出来なかったから一般教養科目を勉強するはめになったから、今は事務員としてしか働けないけど、あなたのいとこ3人は科学を専攻して、全員がサラリーマンとして高い固定給をもらいながら生活しているわよ。本当に沢山の人たちが彼らのことを高く評価しているわ。どの科目を選択するべきかちゃんと考えなさい。」彼女の息子はすぐさまこう言い返しました、「お母さん、人はそれぞれだよ。お母さんにはお母さんのアイデアと理由があって、僕には僕の意見と目標があるんだ。もうこれ以上は僕に強制しないでよ。」彼はこう言ってその場を歩き去りました。二人の会話は又しても意見が合わないまま終わってしまいました。頑なに自分の道を行く息子を見たチンシンは彼の将来がもっと心配になりました。
ある夜、チンシンはキッチンで料理をしていると、彼女の息子がいつも通りに手伝いに来ました。頑固に一般教養科目の専攻にこだわる息子のことを考えた彼女はとても腹を立てていました。そして、彼女は声を上げて彼にこう言いました、「どこかに行ってちょうだい。手伝ってもらわなくて結構よ。」彼女の息子は彼女の行動に唖然としました。しばらくした後、彼はすすり泣きながらこう言いました、「お母さん、今まではずっとお母さんが僕のことを全部決めてきたから、僕は一度も自分の意見を口にしたことがない。でも僕はもう大人になったんだよ。どの科目を勉強するかは僕に決めさせてよ。科学の勉強は凄くストレスが溜まると思うし、一日中研究していると目眩がするんだ。お母さんは僕が一生そんな苦しい思いをすることを期待しているの?」チンシンは自分の息子がこう言ったにもかかわらず、頑としてこう言いました、「私はあなたの将来を心配しているだけよ。現実は残酷なんだから。自分の将来をいい加減に扱ったら駄目よ。」これを聞いた彼女の息子は静かに涙しながら自分の部屋に戻って行きました。
その夜、チンシンはベッドの上で寝返りを打ちながら横になっていました。彼女は息子と口論になった状況を振り返り、とても悲しくなりました。彼女の息子は幼かった頃から彼女の前で泣くことは滅多になかったのです。それは今回彼は心の中で大きな不満を抱え、辛い思いをしていたことを示唆していたのかもしれません。彼女はこのようなことは二度と起こって欲しくないと心の底から思ってはいたものの、一般教養科目を専攻することは彼の将来にとって良くないのではないかと心配していました。ちょうどその時でした、彼女は神を信じていたことを思い出し、この問題を神の前に持って行き、神に祈りを捧げて彼女がどうするべきかを御導きいただくことにしたのです。祈りを捧げた後、彼女は次の御言葉を読みました、「人間は、自分の人生においては自分が無力であり、絶望的であること、何かに卓越する機会や希望は二度と無いこと、自分の運命を受け入れるほか無いことを知っている。そうしたわけで、人間は自分の希望や、叶わなかった願望や理想を、次の世代に期待し、自分の子孫が自分の夢を叶え、願望を実現する助けとなること、そして自分の娘や息子が家の名に栄誉をもたらし、重要人物や富豪、有名人となることを望む。つまり、人間は自分の子が幸運に恵まれることを願う。人間の計画や幻想は完璧であるが、自分の子の人数や自分の子の容姿、能力などは自分で決められず、自分の子の運命は自分の掌中には無いということを知らないであろうか。人間は、自分が自分自身の運命の主では無いにもかかわらず、若い世代の運命を変えることを願い、自分自身の運命から逃れる力が全く無いにもかかわらず、自分の娘や息子の運命を制御しようとする。人間は、自己を過信していないだろうか。これは人間の愚かさと無知さではなかろうか。」「能力や知能指数、意志の力の差異に関係なく、人間は運命において皆平等であり、偉大か取るに足りない人間か、背が高いか低いか、高貴か下賤かによる差別は無い。ある者が追究する職業、ある者の生業、ある者が生涯にわたって蓄える富は、その者の両親や才能、努力、野望によって決まるものではなく、創造主により予め定められている。」
チンシンは神の御言葉を読んだ後、複雑な気持ちになりました。彼女はこう思いました:「私はまさに神の仰っておられるような人なんじゃないかしら?私は自分が出世できなかったから自分の願望を息子に押し付けているんだわ。」彼女は思わず過去を思い出しました。彼女は幼い頃からサラリーマンになる決意をしていました。彼女は沢山苦労した後、4年制大学の受験に失敗したのです。自分の願望を諦めたくなかった彼女は自分の期待全てを息子に託し、息子が注目を浴びて明るい将来を手にするように育て上げようとしていたのです。こうして、彼女は息子がまだ喋ることを学ぼうとしていた時に教育を始め、3歳にもなっていなかった息子を保育所に送り、彼が小学生の時には予備校で授業を受けさせたのです。しかも、彼女は息子が勉強する時間をさらに確保しようとして、息子の外出に制限を課したのです。彼女は自分の息子から幸せで自由な幼年期を取り上げてしまったのです。彼女はこう考えていると息子に少し悪いことをしたと感じました。神の御言葉を受けて、彼女は自分の息子が将来就く仕事や人生でどれだけ稼ぐかは神から予め定められていることであり、彼女の計画や取り決め、または息子の才能や努力によって決まるものではなく、まして彼がどの科目を学ぶかによって決まるようなことではないということを理解しました。しかし、彼女は神の主権を知らず、「知識は人の運命を変える」や「人の宿命はその人次第である」ということを信じていたため、自分の息子は沢山の知識を修得すれば明るい将来を手にすることができると期待したのです。そして、彼女は自分の計画と取り決めによって自分の息子を行動させ、自分が息子のために決めた人生の進路に沿って息子を成長させようとしていたのです。これは極めて傲慢で、愚かで、無知なことだったのではないでしょうか?彼女は過去を振り返りました。彼女は若かった頃、他人に勝ることを目指していました。しかし、苦労して最善を尽くした結果、彼女は何を得られたでしょう?彼女は自分の運命を変えることすらできなかったのに、どうやって息子の運命を変えることができるというのでしょうか?彼女は心の中でこう思いました。「私は自分を過大評価してしまっているわ。息子の将来は外的要因には影響されないんだから、リラックスさせて好みの科目を好きなように選択させてあげた方が良いのではないからしら?こう考えてチンシンは今まで感じたことがない安堵を感じました。彼女は神の御啓示のおかげで自分は常に自らの誤った観点を基に神の主権に逆らっていたということに気付けたことを神に感謝しました。それ以降、彼女は我執を捨て、息子の将来を神に託し、神の支配と御計画に服従しました。
その数日後のある夜、彼女の息子が夕食を済ませて授業内容のおさらいをしに行こうとしていた時、チンシンは彼の所に行ってこう言いました、「ねえ、お母さん分かったわよ。私たちの人生における運命はなかり前から神によって定められているの。あなたはもう大きくなって、自分の考えと目的を持っているんだから、お母さんはあなたの選択を尊重して、科目の選択をする邪魔はもうしないわ。あなたさえ幸せなら、お母さんも幸せよ。」これを聞いた彼女の息子は興奮してこう言いました、「お母さん、それは本当に嬉しいよ!やっと分かってくれたね。実は、以前からお母さんからの要求に凄いプレッシャーを感じていたんだ。毎日のスケジュールも忙しくて、いつも時間が足りないように感じてた。お母さんの期待に応えようとしたけど、もう勉強でくたくたなんだ。」彼の言葉を受けてチンシンは自責の念に駆られました。彼女は自分の息子にそこまでのプレッシャーをかけてこんなに辛い思いをさせていたとは思ってもいませんでした。彼女はこれからは息子に無理やり勉強させないと決意しました。その瞬間、彼女は心の中でとても安定感を感じました。神の御言葉は彼女に実践するべき道を与えてくださり、息子をコントロールするのを止めるよう彼女を導いてくださいました。
ある集会で、チンシンは兄弟姉妹と一緒に神の御言葉の次の箇所を読みました、「人間が知識を習得する過程において、サタンは人間が自分の欲を満たし、自分の理想を実現するよう、あらゆる手段を用いる。サタンがあなたを導きたい道について、正確に理解しているであろうか。穏やかに言えば、人間は知識を習得することは自然であり、何も悪いことが無いと考えている。人間は、高尚な理想を育むことや、大志を抱くことは、単に向上心があると言うことであり、それは人生において進むべき正しい道であると考える。人間が自らの理想を実現したり、人生において出世できたりするとしたら、そうした人生の方が素晴らしいのではなかろうか。そのようにして自分の祖先に栄誉をもたらすのみならず、歴史に自分の名を残すことは、良いことではなかろうか。こうしたことは、この世の人々から見れば、良いことであり、適切なことである。しかし、サタンは、邪悪な動機をもって、人間をそのような道へと導き、それで良しとするかというと、無論そのようなことは無い。実際には、人間の理想が如何に高尚であったとしても、また人間の願望が如何に現実的であり、適切であったとしても、人間が実現したい事柄、求める事柄は、2つの言葉と不可分な関連性がある。その2つの言葉は、人間それぞれの人生にとって不可欠であり、サタンが人間に吹き込みたいのは、その2つの言葉である。その2つの言葉とは、何であろうか。そのひとつは「名声」であり、もうひとつは「利得」である。……「人間は、自分が求める名声と利得を得るため、無意識ではあるが率先して、自分の心身や所有する全ての物事、将来、運命を、すべてサタンに引き渡す。人間は、この引き渡しにあたり、一瞬たりとも躊躇することが無く、それを奪回する必要性を省みることも一切無い。」
神の御言葉が表した内容はチンシンを深く考えさせました:彼女が知識を学んでいた間、サタンは「知識は人の運命を変える」、「人の宿命はその人次第である」、「自分を目立たせよ」、「先祖に栄光をもたらせよ」等、様々な思考や生存の原則を彼女に植え付けていたことが分かりました。その結果、彼女は、人は知識と高学歴を手にすれば名誉と富を手にし、質の高い生活を送れると思い、さらに彼女はそれが追い求めるべき正しい目標であるとまで思っていたのです。この思考と考えによる指示の下、彼女は上流社会に仲間入りして質の高い生活を送ろうと一生懸命に勉強していたのです。彼女の夢が実現しなかった時、彼女は自分の願望を息子に託し、とても若かった息子に自分の欲望の重荷を背負わせ、彼に重いプレッシャーと大きな苦しみをもたらしたのです。神の御言葉による御啓示は、彼女が抱いていた観点は元々適当であるように見えたけれでも実はサタンの策略で満ちていたことをチンシンに気付かせてくれました。彼女が夢を叶えようとする過程において、サタンは名誉と富を追いかける道を歩ませようと彼女を少しずつ誘惑したのです。彼女はこのように追求していた時、自分自身を苦しめただけでなく、自分の息子にも害をおよぼしました。それまでに、チンシンは自らの愚かさと無知さに心を痛め、様々な思考と考えを利用して人々を欺き堕落させたサタンを更に嫌いました。神の時になかった御救いを受けていなければ、彼女は名誉と富を追い求める誤った道を歩み、同時に自分の息子を引き返せない道へと導いていたでしょう。
神はこう仰せになりました、「人々が追究する人生の様々な目標や生活様式を繰り返し調査分析すると、創造主が人間を創った時点における創造主の元来の旨に適合するものがひとつも無いことが分かるであろう。そうした目標や生活様式は、全て人間を創造主による統治と慈しみから引き離すものであり、人間を陥れて地獄へと導く罠である。このことを確認した後の作業は、従前の人生観を捨て、様々な罠から離れ、自分の人生を神に託して神に自分の人生を采配してもらい、神の指揮と導きのみに従うよう心がけ、それ以外の選択肢に惑わされず、神を信仰する者となることである。」 神の御言葉はチンシンが誤った目標を改める決断をするよう導いてくれました。彼女は名誉と地位を求めることはなくなり、「自らを目立たせて先祖に栄光をもたらせよ」を自分の生涯の目標および自分の息子の追求するものとして取り入れるのは止め、まして自分の心に沿って息子の人生と学問を取り決めることは尚更しなくなりました。代わりに、彼女は息子を神の御手に委ね、神の御導きの下で自由に、幸せに成長させています。彼女は神が息子に用意してくださるものは最適なものであると信じるようになりました。チンシンは今、自由と安らぎを感じました。
チンシンがしばらくの間このように実行していると、思いがけない結果が起りました:過去、彼女の息子は良い成績をおさめていながらも、独立性を欠いていました。彼は何をするのかという計画を立てることが全くなく、何をするにしても出来るだけ後回しにする人でした。チンシンはそれについて頻繁に彼と話しをして、彼は全てを計画するべきであり、そうでなければ将来的に社会で安定した基盤を築くことができないと言いながら熱心に忠告までしました。しかし、彼女が何を言っても、どのように言っても、彼は聞く耳を持ってくれませんでした。彼女が彼を解き放ち、自分で生活と勉強の準備をさせるようになった時、彼は全てを完璧に行い、毎日の生活と勉強の計画も上手に立てていました。チンシンはその時まで、自分の身勝手な行動が今までずっと息子の自己啓発を抑止していたことを理解していませんでした。彼女は時にかなった形で正しい決断ができたことを幸福に思わずにはいられませんでした。加えて、彼女は神が万物を支配するのに用いる権威を体験できると以前よりも強く確信していました。
今、チンシンは、神の御言葉の御指導の下、自分の息子と幸せに仲良くできるようになりました。彼女の息子は困難に遭遇すると、彼女の提案を求めています。チンシンはそれに答える際、彼女は創造主の御手は息子が前進できるように導いてくださると信じているから、この先何が起ろうとも、全てに対して勇敢に立ち向かって行くよう息子を勇気づけています。将来がどのようなものであろうとも、彼女は創造主が人生において皆に用意してくださるものが最高のものであると確信しているのです。