「リン、リン⋯」シャオリ―は目覚まし時計の音で目が覚めました。彼女は眠そうな目を開けながら枕の横に置いてあった携帯電話を掴みました。彼女の目には北京語と英語の両方で「Happy New Year's Eve」と明るく書かれた赤ちょうちんが映りました。そして、窓の外では爆竹がパチパチと鳴っているのが聞こえました。完全に目が覚めた彼女はベッドから出て、コートで体を包み、朝の祈りを捧げてから神の御言葉を読み始めました。その時、爆竹の音はますます大きくなっていきました。彼女は心を静めることができなかったので、御言葉の本を横に置き、窓の所に行って街路を行き来するにぎやかな人通りと、街路のお祭りムードを盛り上げる赤ちょうちんと巻物を壁にぶら下げた道路沿いのショップを眺め始めました。彼女はこう思いました。「今日は大晦日で、明日は新年の始まりか。お父さんとお母さんはどうしてるかしら?大丈夫かな?」この時、彼女は両親に会いたくなり、過去の思い出に浸りました。
シャオリ―にはかつて幸せな家庭がありました。彼女は両親と祖父母の愛情に加え、神の御言葉の注ぎと養いを受けていました。子供の頃、彼女は教会の兄弟姉妹たちと一緒によく集会に参加し、讃美歌を歌い、神を讃えました。後に、神の働きが全世界に広まるにつれて、より多くの人々が神の御国の福音を受け入れるようになりました。しかし、神に抵抗する悪魔の政権、中国共産党は神の福音伝道活動を妨げ、家庭教会を全て撲滅し、それによって中国を無神論地域として確立し、中国の人々を永遠に操るという陰謀を実現するため、「5月28日山東省招遠事件」を捏造し、様々な主要メディアを利用して理不尽に非難宣伝を広め、全能神教会に言いがかりをつけ、罪に陥れて非難しようとしました。その後、中国共産党はこの国を上から覆い隠し、クリスチャンを秘かに逮捕し、拷問しました。中国は一瞬にして闇の雲に包み込まれてしまったのです。数多くのクリスチャンとその家族が中国共産党に捕まり迫害されました。シャオリ―もその被害者の1人だったのです。
2014年8月24日の午後、教会からある姉妹が大慌てでシャオリ―の家にやって来ました。彼女は、その前日にリー姉妹が警察に逮捕され、神への信仰に関する書籍とコンピュータ2台までもが彼女の自宅から押収されたとシャオリ―に言ったのです。この知らせを聞いた時、シャオリ―は他の兄弟姉妹たちにも良からぬ出来事が起こるのではないかと心配になり、彼らに用心するようにと伝えました。8月25日の正午、警察署で働く母方の伯母がシャオリ―に電話して、彼女に家まで来て欲しいと言ってきました。彼女の伯母はこう言いました。「大変だわ。あなたが神を信仰していることが誰かに報告されたわ。警察はあなたのQzoneであなたがインターネットをしている写真を見つけたのよ。警察はあなたを逮捕しに来るわ⋯」これを聞いた彼女は、どうしようかと考えて時間を無駄にせず、すぐさま自宅に戻って神への信仰に関する物をまとめて隠し、事態を家族に話しました。
彼女の母親は頭をかきながら涙ぐんでこう言いました。「今中国共産党は狂ったようにクリスチャンを逮捕しているわ。あなたは今すぐ家を出て、どこかで身を隠さないとだめよ。神の信仰は大変だし、困難がたくさんあるわ。この先何があっても、神は私たちの頼れる支持者であることを覚えておきなさい。全てにおいて神を頼りにして、神に心を向けるのよ。どれだけ困難だとしても、私たちは最後まで神に従い続けるのよ⋯」この言葉を聞いたシャオリ―は頷いてから小さな声で一言「分かった」、と言いました。家族と離れ離れになり、帰って来れるのがいつになるか分からないと考えた彼女は、ほっぺたを流れ落ちる涙を止められませんでした。その時、彼女は心の中で泣き叫ばずにはいられませんでした。「天と地と万物は神に創造されたものなのに。その神を信仰し、礼拝して、福音を宣教することが何の犯罪だっていうの?でも、中国共産党はどんどん迫ってくるわ。彼らは神を信仰し、礼拝することを私たちに止めさせるだけじゃなく、私たちを迫害し、逮捕し、噂を捏造し、私たちを中傷し、尋問して拷問までしてくるわ。なんて反動的なのよ!中国は紛れもなく悪魔に操られた国だわ。私の幸せな家族が中国共産党政府に引き裂かれてしまう。」実家を出ることを考えると、彼女は両親から離れるのが名残惜しくなりました。しかし、彼女は両親の前で弱気な姿を見せたり、心配させるわけにはいかないと分かっていました。彼女は涙を流しながら「神に頼るしかないわね」、と言いました。
シャオリ―はそれまで実家から遠くに離れたことが一度もありませんでした。しかし、中国共産党の迫害が迫る今、彼女は嫌々ながらも地元を離れることを余儀なくされてしまい、電車に乗って遠く離れた場所へと去って行ったのです。
電車がゆっくりと動き始めたとたん、シャオリ―はとても心配になりました。彼女が家族と地元を離れるのはこれが初めてだったのです。彼女はどのような試練が彼女を待ち受けているのか分かりませんでした。先の事を考えると、彼女は困惑し、気後れを感じました。彼女は途方に暮れていた時、突然、頻繁に読んでいた神のこの御言葉を思い出しました。「神が私達を導く道は直線ではなく、曲がりくねって穴の多い道であると私は常に感じている。そして、石でごつごつした道であればあるほど、その道は私達の愛する心を明らかにするが……私の経験では、石でごつごつした険しい道を数多く歩み、多くの苦難を耐えてきた。……」
彼女はこの御言葉についてじっくり考えました。神の御言葉は彼女の心を和ませ、暖めてくださりました。彼女は、神を敵として嫌う中国共産党が支配するこの国で神を信仰するには、ある程度の苦しみには耐える必要があると分かっていました。彼女は「この先何が待ち構えていようとも、神が私を導いてくださるわ」、と信じました。その時、彼女は主イエス様が働きをしに来られた時、主の信者の多くが当時のローマ政府によって迫害され、逮捕されていたことを思い出しました。信者たちを逮捕されることから守るため、主イエス様は彼らにこう言って促されました。「一つの町で迫害されたなら、他の町へ逃げなさい」(マタイによる福音書 10:23)。この時、彼女の目は涙で濡れていました。彼女はこの苦難の中で、神はすぐ側にいて、御言葉を使って彼女を慰めてくださっていること、そして彼女に信念と勇気を与えてくださっていることを実感したのです。この結果、彼女はこの先を見据え、大きな危険や逆境が待ち構えていると考えても、途方に暮れず、心細くもなりませんでした。また、神が一緒だと思い、彼女はもう寂しくも、怖くもありませんでした。
長く困難な旅を経て、彼女はやっと新しい町に到着しました。現地の兄弟姉妹たちは彼女を快く迎え入れてくれた上に、とても気を使ってくれたので、彼女はまた家族の温もりを感じることができました。家を離れてから2か月後、彼女に手紙が届きました。彼女の母親はこう書いていました。「警察は村の幹事と手を組んだわ。彼らはあなたのお父さんにあなたが神を信仰していると話して、すぐにあなたを連れ戻して彼らと協力させるように要求してきたわ。それに、彼らは、『彼女は神への信仰を諦めさえすれば無事でいられる。それができないなら、彼女の追跡と指名手配を続行する。村の外で逮捕になったら、懲役40年だ。逮捕を免れたとしても、一生逃走しながら生きることになって、結婚なんかできなくなるぞ』、と言ってお父さんを脅してきたのよ。あなたのお父さんは彼らの言ったことを信じてしまったわ。お父さんは今あちこちであなたを探し回って、あなたに戻ってきて欲しいと思っているわ。この手紙を受け取った後、絶対に戻ってきたら駄目よ。これは中国共産党の罠と策略だって皆知ってるわ。彼らはあなたを逮捕して、神に背かせようとしているのよ。だから、あなたは安心して自分の本分を尽くして、神の愛に報いなさい。」
彼女がこの手紙を読んだ後、涙が彼女の顔を流れ落ちてきました。彼女は中国共産党がこのような卑劣な手段を使ってくるとは思っていなかったのです。彼女は彼らによる迫害のせいで故郷に戻ることができなくなってしまいました。さらに、中国共産党は彼女の知らぬ所で彼女の父親を脅していたのです。彼女は中国共産党に対する嫌悪でいっぱいになりました。そして彼女は神のこの御言葉を思い出しました。「数千年にわたり、この地は不浄の地であった。耐えがたいほど汚れ、悲惨に溢れている。至る所に幽霊がはびこり、欺し偽り、根拠のない言いがかりをつけ[1]、冷酷かつ残忍であり、この幽霊の街を踏みつけて屍だらけにした。腐った屍の悪臭が地を覆い空気に充満し、そこは厳重に守られている[2]。誰が空の彼方の世界を見ることができようか。悪魔は人間の身体全体をがんじがらめにし、両眼を見えなくし、両唇を堅く封じる。魔王は数千年前から現在にいたるまで猛威を振るい、幽霊の街を堅固に警備しており、それはあたかも難攻不落の悪魔の城のようである。一方、警護に当たる番犬の群れが睨んでいる。番犬は神による不意討ちで完全に滅ぼされるのを深く怖れるあまり、平和と幸福の余地はない。……卑屈な者ども。彼らは恩を仇で返し、神を侮って久しく、神を虐待し、残忍を極め、神を少しも敬うことなく、強奪や略奪を行い、良心を完全に失い、良心にすっかり逆らい、純真な人々を誘惑し無分別な状態に陥れる。遠い昔の祖先とは何なのか。愛すべき指導者とは。彼らは皆、神に反抗している。その干渉により、地にある者すべてが闇と混沌に陥れられている。宗教の自由だと。市民の正当な権利と利益だと。そのようなものはどれも罪を隠蔽する手口である。」
神の御言葉は神に抵抗する中国共産党の本質を明確に明らかにしています。神が終わりの日の働きをなさって以降、中国共産党政府は狂信的に神の働きに混乱と害を及ぼし、クリスチャンを逮捕して迫害しています。その結果、無数のクリスチャンが逮捕され、拘置され、残酷な拷問を強いられています。中には障害を負うまで、または死ぬまで拷問された人たちもいます。中国共産党によって無数のクリスチャンの家庭が引き裂かれ、無数のクリスチャンが自宅に帰れなくなっているのです。中国共産党がうたう「信仰の自由」や「法的権利と市民の関心」などは中国人と世界を欺くためのナンセンスであり、彼らが国民を騙し、名声を得て、犯罪を覆い隠すために使う策略に過ぎないのです。しかし、神の御知恵はいつもサタンの策略に基づいて行使されます。中国共産党による迫害を通じ、心と魂を持つ者は彼らの邪悪さと卑劣さに対して真の見識を得て、それは彼らがサタンに背いて、全能神に立ち返ることができるようにしてくれます。シャオリ―もまた、サタンはどれだけ獰猛であろうとも、常に単なるチェスの駒であり、神の経営計画の中で奉公しているだけであるということを心から知りました。彼女は神がサタンに深く堕落させられた私たちを救うために、大きな危険を顧みず中国共産党が支配するこの国に来てくださったこと、そして神の御言葉を私たちに注ぎ、私たちを導いてくださっておられることについても考えました。神の愛はなんて偉大なのでしょう!これについて考えた時、彼女は発奮して神に従う決意をしました。
シャオリ―は窓から鈍色の空をじっと見つめていました。冷たい突風が吹き、彼女の顔は冷たくなっていました。すると、爆竹の音がなり、彼女は思い出の中から目を覚ましました。彼女は村の外で合計5年を過ごしました。彼女は家族から離れて暮らす辛さを最大限に感じながらも、その間に創造物としての本分を尽くし、多くを学んでいました。彼女が困難に直面している時、神は常に彼女を導き、勇気づけてくださりました。
「シャオリ―、朝ごはん食べにいらっしゃい」、と滞在先の姉妹が優しく彼女を呼びました。彼女は返事をしてからダイニングルームに歩いて行きました。朝食後、2人は一緒に神の御言葉を読み、それぞれの体験を話し合い、神の愛と御慈悲の証言をしました。彼女は家族から離れていたものの、神の御言葉を受けながら、兄弟姉妹たちの側にいることができたおかげで、実家にいるような温もりを感じていました。
午後になると、兄弟姉妹が数人来て、彼女たちと一緒に集会をしました。集会の後、彼女は、「この世界に生まれてくる人はそれぞれが神から与えられる神聖な任務を持っています。彼女の任務は主の再臨を渇望するより多くの人々に神の御国の福音を宣べ伝えることであり、彼女は中国共産党の迫害を受け、故郷に戻ることはできなくても、自分の任務を諦めず、全力でそれを尽くす必要がある」、ということを理解しました。彼女は全能神のこの御言葉を思い出しました。「人類の一員として、また敬虔なクリスチャンとして、神が委ねる任務を全うするために心と体を捧げるのはわたしたちすべての責任であり、義務である。なぜならわたしたちの全存在は神から来たものであり、神の統治のおかげで存在しているからである。わたしたちの心と体が神の委ねる任務のためでも、人類の義なる目的のためでもないなら、わたしたちの魂は神の任務のために殉教した人々に値せず、ましてやわたしたちにすべてを与えた神にはなおさら値しない。」神の御言葉は、生きて神の愛に報いるための更に厚い信仰と力を彼女に与えてくださりました。その瞬間、彼女は神の前でこう決意しました。「私はあなたから受けた救いに報えるよう、来年自分の本分を上手に尽くしたいと思います。私の将来が困難、危険、そして苦難だらけだとしても、いつも通りあなたに従って行きます。」
夜になると、シャオリ―は神が栄光を手にする日が一刻も早く来ることを楽しみにしながら、心の中で神に祈りを捧げました。